流行りに踊らされないよう…(カスタマーサクセス編)

実は私は「カスタマーサクセス」という言葉があまり好きではないです。

顧客の成功に向けて積極的に関与していこうという考え方は好きです。

 

ですが、この言葉が出てきた時から、これってただのバズワードであって、これまでの商売と何が違うのだろうか、、と、ずーっとしっくりこないままでいます。

もう少し書くと、「買ってもらう」、「使ってもらう」、「良い体験をしてもらう」、「その人に関心を持ってさらにもてなす」、結果、「またきてもらう」というのは商売の基本であって、どのあたりが新しいことなのかというところです。

 

例えば、私には高校生の頃からかれこれ20年来お世話になっているお蕎麦屋さんがあります。週末の部活のお昼休憩なんかでよくみんなで行っていました。

手打ちの蕎麦に、天ぷらなんかつけるととても美味しい。私の一押しは小海老のてんぷらとざるそばのセット。私は特段グルメな方ではないですが、それでも美味しい方だと思います。

運動部の学生には「午後も頑張ってね」なんて言いながらドリンクをくれたような思い出もたくさんあります。蕎麦も大盛りにしてくれたり。食べ盛り、運動盛りの高校生には本当に嬉しいおもてなしです。

こういうお蕎麦屋さんですから、私も後輩をつれていって紹介をすることもあれば、私自身もただ蕎麦を食べるだけでなくて、何か新しいメニューを試してみたりもしました。

大人になった今、私は学生を教える立場として運動部に関わっていますが、いまだにそのお蕎麦屋さんには行きます。以前、結婚すると言ったら、結婚式の日に電報までいただいてしまいました。後日、当然ですが妻を連れてまたお蕎麦をいただきました。

 

私がそのお蕎麦屋さんのご主人やおかみさんと特別に仲がよかったのでしょうか?そうは思いません、なぜなら運動部の他の学校の子にも同じように接していたし、名前もしっかり覚えていました。

ご主人やおかみさんの性格でしょうか?それはそうかもしれません。積極的にお客さんのことを知って、応援をしたい性格だったのかもしれませんね。結果、私は20年にわたって週末になるとここでお蕎麦をいただいているんです。

 

皆さんにはこういった体験ありませんか?

これってカスタマーサクセスと何が違うんでしょうか?

やっていることって似ていませんか?

 

違いがあるとしたら、「顧客との継続的な関係」が「目的」か「手段」か、というところかもしれませんね。

一般的に企業がカスタマーサクセスを行う場合、「ヘルススコア」などを計測しながら関係性の維持に努めます。それは継続的な収益のためです。「顧客の成功」と言いつつも、それは手段であって、目的が収益に向くような活用の仕方をしているところが多いように感じます。

一方で、私が通っているお蕎麦屋さんのご主人は、「継続的な収益」は結果であって、目的にしているのは「私との関係性の維持」つまり、「顧客の成功」のように思います。単純に暖かさの違いかもしれませんね。ご主人は私に対して「また来て欲しいな〜、来てくれたら嬉しいな〜」くらいにしか思っていないと思います。

 

このように、お蕎麦屋さんと一般企業では、このプロセスを行う「目的」は違うかもしれません。

しかし、「買ってもらう」、「使ってもらう」、「良い体験をしてもらう」、「その人に関心を持ってさらにもてなす」、結果、「またきてもらう」といった一連のプロセスは、商売の基本として、あまり変わらないものだと思いませんか?

企業はカスタマーサクセスを実行するためにあらゆるデジタルツールを使います。でもそれは使うことは手段ですから、実際に行っているプロセスについてどう思いますか?

 

今回の「カスタマーサクセス」のような流行りの用語や考え方が次々に出てくるかもしれませんが、私は「お客様に満足してもらえる製品・サービスを生み出して」、「使ってもらって良い体験をしてもらって」、「お客さんに喜んでもらえる+αの価値を提供して」、「いつも来てくれる、使ってくれる、また使ってくれる、もっと使ってくれる」というのは商売の基本であって、当然のことであるように思うのです。

 

もし、この考え方が「ちょっと違うよ」という方がいらっしゃれば、是非違いを教えていただきたいと思います。私はこのあたりで思考停止しています。

 

あるいは、この違いがはっきりわからない中で、最近流行っているから、、最近会社でも取り入れようとしているから、、という理由で「カスタマーサクセスやってみるか」というのはやめたほうが良いかもしれませんね。

会社で「カスタマーサクセスだ」と言っている社員を見ると、「今までやってきたこととは何が本質的に違うの?今までだってお客さんの成功を願ってやってきたじゃない」っていつも思っています。

 

言い換えると、企業が提供しているサービスや商品は千差万別なわけで、決して教科書通りにやらずに、「顧客の成功」に向けて自分たちは何の価値を提供するために、何をすべきか、今までのやり方だと何が足りなくて、何をするべきなのかという視点で見つめ直すのが良いように思います。

 

バズワードに踊らされないようにしましょうね、特に経営者や部長クラスの、社内に影響を与える人たちこそ。