プロダクトが政治の道具にならないように

「プロダクトマネージャーがプロダクトを企画し、関係者と協力しながら推進する」、こう書くと当たり前のことなのですが、リリースをして「さぁ顧客の声を聴きながら改良を重ねてビジネスを大きくしていくぞ」というタイミングになると、これがなかなかスムーズにいかない状況にすぐなります。

 

新しい製品は社内でも注目されやすいため、特に営業やマーケティング部門ではどれだけ売るかという話になります。そして、どれだけの手柄をあげた、、などアピール材料にされがちです。

こういう書き方をしていますが、決して誰かに悪気があるわけではありません。注目されているので、社内で報告が必要だから実に自然なことです。当然ながら、うまくやった営業社員はその実績をアピールしたいでしょう。

 

そうなると、いつの間にか営業の上層(営業部長など)から、社長に対する実績アピールのために使わるようになります。

そうすると、その営業チームや営業部長が製品の推進に関して発言力を持つようになり、次第に、さらに伸ばすために製品はどうあるべきと思うといったプロダクトマネジメントの領域に踏み込んだ意見を言うようになります。

これが社長などの耳に届くと、社長からプロダクトチームに極めて局所的な製品改良の命令が落ちてくる、、というような構造が発生しえます。「○○でもっと売れるように、××の機能を入れた方が良いんじゃないか」などです。

社長レベルになると、普段から現場が見えているわけではないので、一部の情報に対して、「皆がそう思っている」と考えてしまいがちですので、こういった状況はわりと発生しがちです。こういった状況を、私は「プロダクトが政治の道具になっている」状況としています。

 

プロダクトマネジメントにおいては大局を見ることがとても重要で、市場全体の動きや、顧客の反応、今後の戦略を鑑みながら、大きな意思決定をするものです。上述の命令が生じてしまう状況は決してヘルシーではありません。なぜなら、プロダクトマネージャーの考えている次の一手とコンフリクトをする場合が往々にしてあるためです。

 

もちろん、そういった関係者の期待に応えるのも、仕事を円滑に進めていくにあたっては大事な観点ではあります。特に新任のプロダクトマネージャーは状況もよくわかっていなかったり、周囲からの信頼を獲得するのが最初ですから、そういった期待に応えるというのも意味があることと思います。

しかし、それがうまくいかないと後にプロダクトやプロダクトチームの責任にされます。そういった人たちには実際にプロダクトに対して責任が取れないため、責任はプロダクトチームにきます。よって、ただ対応をして社内の期待に応えていくというのは得策ではありません。

実績はあがらない上に、お客さんも増えない、お客さんに対して価値も提供できない、プロダクトマネージャーもストレスがたまる、、誰も幸せになれません。そういったことに時間を費やすくらいなら、市場や顧客、そこにどうアプローチするのが適切かを見極めてスペックを組んでいく本来のことを遂行することが重要です。

 

ですが、冒頭に記述した通り、リリースした製品ほど、プロダクトマネージャーが主導権を持って製品を運転していくのは難しいこと。しかし上述したような状況になってしまうと、そのプロダクトはうまくいかないでしょう。(膨大な時間が無駄になる)

 

この状況が発生しうることを見据え、リリースする段階で、プロダクトサイドの上層や、そこを経由して社長レベルとしっかり方向性ややり方について握っておくこと、追うべきKPIや、Not to Doまで明確にしておくこと、関係各チームの上層(営業部やマーケティング部)の上層も含めて、同じ情報を持っておくことが大切になります。

 

その上で、リリース後、実際にどのように進捗をしているのかに対して、プロダクトマネージャーが主導をとって関係各所と情報共有を重ねて、何か方針を変更したりするのであれば皆がいる場できちんと議論をして決めていくということが大事で、製品に関して密室で議論がされないように主導権を握り続けられる環境を意識的に作ることが大事です。

 

このセットアップと定期的なレビューができるかどうかが、意外とその製品に価値があるかどうかよりも、「時間を無駄にしない」という観点で重要だったりします。